黒沼家は東京の大きな戸建てに住む裕福な家庭。朋子は専業主婦で、17歳年上の夫謙造、血の繋がらない二人の息子(長男杉男、次男竜二)、謙造の父重光との5人暮らし。テキパキと家事をこなし黒沼家を切り盛りしていた。そんなある日、思いもよらず夫や息子たちが前妻の恒子と会っていることを知り落胆、離婚覚悟で家を出る。高校時代の友人時子のマンションに居候し、編集の仕事を手伝うことに。
一方、謙造は橋建設の入札で忙しい日々を過ごしていた。それは恒子から得た情報を元にした裏取引も含んでいた。恒子は離婚後、大阪の料亭で仲居頭をしていたおり、そこで耳にした橋建設に絡んだリベートの情報を謙造に流していた。恒子は14年前、謙造の出張中に男と外泊し3歳の末娘光子を肺炎で死なせていた。そのことへの罪滅ぼしでもあった。橋建設の入札は成功し、謙造は常務取締役へ昇進。しかし喜...
第24回ギヤラクシ一獎励賞受賞作品。第5回品。1935年秋から226事件が発生した1936年2月26日までの物語。1935年晚秋。女学校の教師をしている紀田家の長女.礼子(田中裕子)は熱を出して学校を早退。帰宅するといとこの軍医、一郎(永島敏行)が来ていた。心配する一郎に礼子は耳を貸そうともしない。一郎が気遣うのは、礼子の父.順弥(佐藤慶)のことがあるからだた。順弥は肺結核で、2年前から療養所に入つたままだた。好編が多い向田邦子新春シリズの中でも屈指の佳編。心に残るドラマだつた。戦前の生活がリアルに描かれていた。朝、娘たちの四角いアルミのお弁当箱を並べて結めている忙しさ。お正月の睛れ着を着るときの晴れやかなざわめきなど、なんともいえない魅力が漂ていた。226事件に加わるいとこヘの思いと、彼を慕う長女の切ない心情…
昭和13年、東京池上。12年前に父を亡くした桂木家は、女ばかりの4人家族。長女松乃(田中裕子)は夫が戦死し、いまは実家に。そして母親の里子(加藤治子)と次女五海(戸田菜穂)、三女七重(田畑智子)とつつましく暮らしていた。そんなある日、叔父の富之介(名古屋章)が酔っぱらって磯島光太郎(小林薫)という落語家を引っぱってきた。その磯島は池上で探し物があるという。松乃は、がさつで調子がよくて、どこか信用できない磯島を好きになれなかったが、その後も磯島はおかまいなしに桂木家にやってきた。奇妙な関係が続くうちに、磯島が天涯孤独の身だと知った桂木家の人々は次第に磯島と打ち解けていくが…。
「国盗り大名」として戦国の世に地位を築いた北條早雲(若き日の名は伊勢新九郎)の大望に満ちた半生を描く大型スタジオ時代劇。応仁の乱が長期戦になり出したころ、伊勢新九郎=後の北條早雲(北大路欣也)は足利八代将軍義政の弟義視(仲谷昇)に仕え、都での戦いに加わっていた。しかし義視は兄との争いに敗れ、伊勢の豪族宇部兼友(川合伸旺)を頼って都落ちし新九郎もこれに従った。しかし新九郎は、義視と側近の手に負えぬ悪徳ぶりを目の当たりにし、浪人する決心をした。そんな新九郎の気骨に惚れた相模の乱破の長老風魔の弥造(中村翫右衛門)は、彼に軍資金を与え後押しした。提供:松下電器産業、マツダ、ニッカウヰスキー。
ある一人の銀行マンが、定年退職した翌日に蒸発した。ドラマは、会社人間だった男が、「会社」という居場所を離れるところからはじまる。男はなぜ姿を消したのか…、男の足取りを追ううち、会社一筋で生きながら、ゴーギャンの絵を愛した男の<自画像>が浮かび上がってくる。そして、ドラマは意外な展開をみせる。
昭和20年1月。東京目黒に住む朝比奈家は、空襲のなかで不安な日々を送っていた。朝比奈家は、母親の絹江(岸惠子)と娘3人の4人暮らし。軍医だった父親は前年、ビルマで戦死。母親の心中を察する長女真琴(清水美砂)は、軍人小田切(椎名桔平)との恋を打ち明けられずにいた。
そんなある夜、一家の元に浦島壇吉と名乗る男(小林薫)が現れた。絹江の亡夫と同じ部隊で世話になっていたという。絹江は夫の知人として歓待するが、真琴たちは戦地の話題になるとごまかす壇吉を信用できずにいた。それ以来、壇吉は一家を守るのが自分の使命だと話す。ところが、真琴は壇吉が室内を漁る空き巣まがいの行為を目撃。真琴は出ていけと怒鳴るが、絹江は壇吉をかばい続ける。
昭和20年3月10日の東京大空襲で焼け出された中島咲(岸惠子)は、娘の今日子(清水美砂)と未来子(田畑智子)と共に、芸者仲間だった静江(藤村志保)を頼り埼玉にやってきた。料亭を営む静江から家を貸りて親子三人で暮らし始めるが、血の繋がりのない咲と今日子は喧嘩が絶えなかった。そこへ芸者見習いの敏子(松居直美)と秋代(内田春菊)に加え、料亭の元従業員定子(戸田菜穂)までが同居することになる。
ある日、咲は静江の甥で士官学校幹部柳史郎(小林薫)と再会した。20年前、恋人同士だった二人は互いに心が揺れ動く…。