慶安四年、由井正雪、丸橋忠弥を中心にした幕府転覆計画は失敗に終った。老中松平伊豆守は由井正雪の動きを早くから察知し、その資金源を、老忍者服部半助に探らせていた。その結果、豊臣家が遺した巨億の財宝がかくされていることを知った。そして、その在りかを解く鍵は、豊臣家の恩恵を浴した大友忍者六人のくノ一が胎内に秘めた六個の鈴であった。鈴を強奪せよという伊豆守の命を受けた、天草扇千代を首領とする、道忍、狂念、兵部、鞭馬、水阿弥ら六人の鍔隠れの忍者は、くノ一の住む長崎に向った。しかし彼等の動きは、早くもくノ一の首領天姫の許にも伝わった。天姫を中心に、もみじ、お志乃、お珠、夕心尼、お貞の六人は鈴の死守を誓った。お志乃は夢幻琴の音、密霞の術を使い篝火兵部を倒しながら、扇千代のために術を破られ、忍法山彦によって自らも命を絶った。しかし扇千代も天姫の髪縫いの術によって盲目...
貧しく粗暴で醜い青年蒲郡風太郎は、小さいころ母が病気にかかり、金がないばかりに医者にソッポを向かれて死んでしまってからというもの“金のためならなんでもする”という信念を持つに至った。何とか最下層の生活から這い上ろうとする風太郎は、兄丸社長の車にわざとぶつかり、社長の家にころがり込む。姉娘の三枝子から“ウスギタないアニマル”とさげすまれるが、せっかく関係をつけた金ヅルを、そう簡単には逃がそうとはしなかった。彼はこの家で自分の地位を築こうと、醜い妹娘の正美を自分のものにして、恋人の運転手を殺してしまう。その上、社長に取り入るため、悪友と計って、社の給料一億円を襲わせ、彼の力で取り返すという芝居を打った。この芝居はみごと成功し、感激した社長は風太郎を一躍重役に抜擢した。風太郎の欲望は底のない穴のように深く果てしがなかった。あらゆる権謀術数をもちいて、兄丸社...
円城家に新しい女中さんがきた。田中姫子は福島の貧しい農家に生れ、砂利トラック相手の売春婦にまで身を落した過去をもっていた。だが、砂利トラックの運転手鈴木亀吉を知ってからは、地道に結婚資金を稼ぐために、弥生家政婦会に所属したのだった。円城家は、狭心症で寝たきりの主人礼次郎と、芸者あがりの後妻由紀、長男のテレビライター英介、長女の短大生冬子、それに婆やのしのが、広い邸宅に住むブルジョア家庭であった。姫子にとっては上流家庭の雰囲気だけでも、快いものであったが、礼次郎の莫大な資産をめぐる由紀と冬子の争いには、へきえきさせられた。そんな姫子に悲劇が襲って来たのは、冬子の誕生日であった。らんちき騒ぎの末、クジ引きで負けた冬子が、その全裸の代りを姫子に要求したのだ。だがそれは英介の出現で、救われた。前から姫子の肉体を狙っていた英介にはよいチャンスであった。思いあま...
博徒中万組の中田万造とグレン隊東京地下警察会長黒岩元が手打ち式を行った日、忍朝二郎は、中万から黒岩を叩くよう依頼されたが、失敗に終り、命を落した。元凶を黒岩とみた忍鉄也、銀二郎、健三の三兄弟は、この手打式の会場に殴りこんだ。その不敵な面魂は、強く中万の胸に残った。十数年のち、中万は関東総代となり、黒岩はグレン隊の大組織東京クラブのボスにおさまっていた。十数年前の手打式も水泡にきして、今は暗黒街で牙を競い合う中万と黒岩。そんな中万が九州榊組で鉄也、銀二郎、健三の兄弟に再会した。折りしも、中万の長男勝雄が人気歌手三条早苗のアトラクションをやろうとして黒岩組の手で邪魔だてされた事件がもちあがっていた。この処理を頼まれた兄弟は彼らの父の通称であった「成金一家」の再興を条件に、黒岩傘下のシマを次々と奪っていった。黒岩組にとっては今や勝雄に代ったこの兄弟の存在が...